bullet proof soul

ダダ漏れる日々のメモ。防弾仕様にはなっておりません。
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    ママの歌(銀紗44号投稿)

     

    そおっとドアを開けた時 

    ママは歌いながら廊下を拭いていた 

    わたしがただいまと言って 

    ママがおかえりと言った 

    胸を撫でおろすように靴を脱いだ 

      

    風を入れようと窓を開けた時 

    ママは歌いながら洗濯物を干してた 

    十年前ママに教えてあげた歌 

    わたしが幼稚園で習った歌 

    ママのレパートリーはわたしの歌 

      

    ママが歌っていないとき 

    ママはジェットコースター 

    ブレーキは付いてない 

    遠心力が吹き荒れるけど降りさせてくれない 

    息が出来なくてあちこちが壊れて 

    暫く学校に行けない 

    「ちょっと熱が下がらないものですから」 

    痣が薄れるまでは 

      

    さっき洗濯室の前を通ったら 

    ママは壁にもたれてたばこを吸ってた 

    隣に行って火を分けてもらった 

    パパはいつだって知ってるけど知らない 

    ふたり黙ったまま煙い世界で 

    洗濯機が止まるのをまってた   

     

     

     

     

     

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        | きこ a.k.a 晶子(あきらこ) | Monologue | 14:06 | - | - |
      アディクション

       

      今日は必ず布団を干せと 

      朝のテレビで言っていた 

      雲の向こうに御日様が 

      いないわけでもないけれど 

        

      テレビとスマホとPCと 

      情報源にくるまれて 

      聖徳太子じゃあるまいし 

      ひとつ切ってもよかろうに 

        

      耳にやさしい情報は 

      誰かが選んで送り込む 

      それを知ってはいるけれど 

      耳にやさしい情報だ 

        

      座ってるだけで忙しい 

      ガチョウのように喰わされる 

      考える暇もないけれど 

      盗んだ言葉でやり過ごす 

        

      好きなものだけ喰ってるよ 

      バランス取れてるわけがない 

      立派ななにかを言いたいが 

      量産された安物だ 

         

       

       

       

       

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          | きこ a.k.a 晶子(あきらこ) | Monologue | 09:55 | - | - |
        はじまらないひとのうた

         

        雨雲がのそりとやってくる  

        友達になれそうだ 

        ぼくのこのどうしようもなさ 

        このおなじみのやつ 

        どうしようもないままで 

        また瘡蓋を剥がしてる 

          

        きみが呉れた子猫は 

        永遠に噛み癖が治らない 

        永遠に子猫のままで 

        ダッジのバンくらい育つ 

        永遠には生きられない 

        永遠に噛み癖が治らない 

          

        いつも眠くなってしまって 

        いつもいつも勝てない 

        今日も急いでいますか 

        置いてってください 

        上手いこと許してやってください 

        何かから少しだけ逃げたい 

          

        じつはアンモナイトになって 

        大理石の壁の中で全てを観ていました 

        大変勉強になりました 

        大変勉強になりましたが 

        それだけの事でした 

          

        だれも期待しないで 

        なにも期待しないで 

        ちょうど良く距離をとって 

        ただ眺めていて 

        飽きたらもう行って 

        気が向いたらまた来て 

          

         

         

         

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            | きこ a.k.a 晶子(あきらこ) | Monologue | 19:02 | - | - |
          原始の原子の原資の幻視

           

          おまえが掘っているそれは 

          トンネルなのか墓穴なのか 

          ニンゲンじゃないならカミサマなんだろ 

          見たとこイヌみたいだけど 

          今このときも新しい言葉が生まれて 

          現象に名前を与えている 

          歪んだバイオリンが頭蓋を満たす 

          さあ名前を与えてくれ 

          この現象に名前を与えてくれ 

          ヒントその壱 甘くて苦い 

          ヒントその弐 苦くて甘い 

          目を瞑ってまだ無い景色を眺める 

          発生する 発芽する 発見する 

          カミサマじゃないのか 

          イヌでもないのか 

          名前が欲しいのか 

          ソウイッタ ファクターハ 

          スベテ ヒントニ ナリウル 

          すべてはすべて 

          すべてのすべて   

           

           

           

           

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              | きこ a.k.a 晶子(あきらこ) | Monologue | 21:53 | - | - |
            長い長い長い旅

             

            きみは十分に吟味した木の枝を 

            ぶんと振り回しながら歩いた 

            焼け落ちた神殿の敷石を叩き 

            草むらをがさがさ脅しながら歩いた 

            口笛 

            おい口笛なのか 

            旅はまだまだ続くから 

            景色はゆっくり変わっていくから 

            目を閉じることもできたのに 

            「それはスタイルじゃないんだ」 

            何もかもは思い通りにいかない 

            不安なら誰のポケットにも入ってる 

            ヒントさえやれば音もなく育ち 

            もう一人では畳めなくなる 

            不安は怖れになり敵意になり 

            あれもこれも誰かのせいにしてしまう 

            あまりに大好きだったから 

            あまりに大好きすぎたから 

            きみはそれを殺した 

            ぽきりと折って投げた 

            耳まで裂けた口を開けて 

            はらわたが出るまで笑った 

            それは渦巻く咆哮に変わり細い月が震えた 

            北の針葉樹林からオオカミが遠吠えで応えた 

            すべて城壁ができる前の話だよ 

            精子と卵子が出逢う前の話だよ 

            僕らの記憶が溶け合わないのは 

            ぼくらが右手と左手だからだよ 

            なにを不思議に思う余地があるの 

            ぼくの時間はぼくのもの 

            きみの時間はきみのもの   

             

             

             

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                | きこ a.k.a 晶子(あきらこ) | Monologue | 01:26 | - | - |
              ナンカタベタイネ

               

              なんか食べたいね 

              なんかおいしいもの 

              ガッツリ系 シズル感 映え イイネ 

              食べた過ぎて絞れないよ 

              肉 魚 丼 定食 

              もう正直なんでもいんだよ 

              和食 洋食 イタリアン 

              満足するまで 

              納得するまで 

              ステーキ ラーメン スシ バーガー 

              もう何年も満足してない 

              腹の中に狗を飼ってる 

              そいつがどしても満足しない 

              ナンカタベタイネ 

              ナンカタベタイネ 

              もうずっと吐きそう 

              ナンカタベタイネ 

              ナンカタベタイネ 

              おれもう破裂するから   

               

               

               

               

               

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                  | きこ a.k.a 晶子(あきらこ) | Monologue | 13:39 | - | - |
                アクシデント

                 

                あの時わたしは 

                あなたの海馬に触れ 

                感電してしまった 

                 

                あの時あなたは 

                わたしの心臓に触れ  

                指紋を残してしまった  

                 

                 

                 

                 

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                    | きこ a.k.a 晶子(あきらこ) | Monologue | 12:42 | - | - |
                  3センチ

                   

                  クリーニング屋の針金ハンガーで 

                  耳から引き摺り出した掻き出した 

                  からっぽだ軽くなった重力はもう敵じゃない 

                  地べたから3センチ浮いて歩く 

                  昨日より3センチ高みから眺める 

                    

                  心配だなきみは 

                  力づくで忘れようとするから 

                  陶酔を手に入れて噛み砕いて飲み下して 

                  揺れてるだけで酔えるから探さなくていい 

                    

                  正面から流れて来る 光も音も時間も 

                  真っ直ぐに向かってくる望まない何もかも 

                  怖がらないで痛くない思ってたほどには 

                  しかも永くは続かない望んでたほどには 

                    

                  言葉にしようとするから苦しい 

                  空気のまま漂わせておこう 

                  汚れた気がしてるのはまだ生きてるからさ 

                  きみの中に隠れた秘密の子供が 

                    

                  始めなければ終わらないよ 

                  それが不安なんだろう 

                  混ぜ合わせてみれば解かるかも 

                  玉子はもう割ってしまったわけだし 

                     

                   

                   

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                      | きこ a.k.a 晶子(あきらこ) | Monologue | 12:01 | - | - |
                    豚の名前

                     

                    死んだ豚を焼いて食べると美味しい 

                    本当は死んだんじゃない 殺したの 

                    殺した豚を焼いて食べると美味しい 

                    誰かが代わりに殺してくれた 

                    その人の名を私は知らない 

                    その人も私の名を知らない 

                    私は食べた豚の名前を知らない 

                    豚のお母さんがつけた名前だよ 

                    その人も殺した豚の名前を知らない 

                    その人は豚の番号を知っていたかもしれない 

                    豚のお母さんがつけた名前を剥ぎ取り 

                    引き換えに赤いマジックで横腹に書いた番号 

                    書類と突き合わせ 確認のレ点を打つ瞬間だけ 

                    その人は豚の番号を知っていたかもしれない 

                    豚の番号はその人の網膜から瞬時に脳に伝わり 

                    そして瞬時に霧散した 

                    だから私は豚の名前も番号も知らない 

                    豚のお母さんは今も産んだ子豚たちに名前を付けている 

                    その人は今も豚を殺している 

                    殺された豚を焼いて食べると美味しい 

                    そして私はビーガンにならない   

                     

                     

                     

                     

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                        | きこ a.k.a 晶子(あきらこ) | Monologue | 23:02 | - | - |
                      岸辺にて

                       

                      手の中の小鳥のように鼓動する心臓 

                      ぼくの安心毛布であり自爆ボタンである 

                      意味あり気な活字を唱えて 

                      次第次第に透明になり広告だけが残る 

                      日常の欠片を紡ぐ憧れのお仕事は 

                      ゆっくり しかし確実にぼくをすり潰す 

                      優しい嘘 悲しい嘘 哀れな嘘 

                      それらは等しく嘘でしかないと証言しよう 

                      いちど目が覚めてしまえば 

                      嘘のないものはたいへんな貴重品で 

                      満足と言うあの心持ちを喪って後悔しないでもない 

                      裏返しに丸まった靴下を見る時の目で 

                      立ち尽くし終わりが来るのを待っている 

                      ふいに左耳からモーツァルトが漏れ出し 

                      残り時間のあまりの短さを知る 

                      絡まる五線譜をほどきながら 

                      ぼくはいま泣いていると 

                      漸く認めるのだ  

                       

                       

                       

                       

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                          | きこ a.k.a 晶子(あきらこ) | Monologue | 22:50 | - | - |
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